APを知る
AP(アカデミック・ポートフォリオ)とは
APとは、いわばTPの振り返る範囲を全ての活動、つまり、教育だけでなく、研究、管理運営および社会貢献に広げたものです。
また、それぞれを独立に記述するだけでなく「統合」という項において、それぞれの寄与について考察し、さらに、教員としてのコアを見出します。
紙媒体のAPは、典型的には14-20ページほど本文に根拠資料が伴う形式です。
作成目的
活動の改善と業績の可視化にあります。
TPは上記目的を教育に絞ったものであるのに対し、APはそれを全ての活動に広げます。
大学教員は研究者でもあり、また、管理運営や社会貢献という役割も担っていますので、これらについて統合的に扱えるという点では、APを作成する意義は大きいといえます。
APの構成
APは、次のような項目で構成されます。
・はじめに
・教育
・理念
・責任
・方針・方法
・成果・評価
・(改善・努力)
・目標
・研究
・理念・意義・目的
・代表的な研究
・獲得した研究資金
・知識・技術・技能
・目標
・サービス
・管理運営業務の代表例
・社会貢献の代表例
・統合
・各活動の相互の寄与
・これまでの主要な成果
・大学教員としてのコア
・目標
・おわりに
目次としては、自分の活動にあうように自由に設定できますし、これら以外の、改善したことや研究に関連する事項等の要素を追加することもできます。
作成方法
教育、研究、サービス、統合の順に取り組んでいきますが、教育の部分はTPと同様です。各活動においては理念をいきなり考えるのではなく日頃の具体的な活動からその背後にある大切にしている考えに掘り下げていきます。
TPと同様、一人でも作成は可能ですが、より深く振り返り、楽に作成するには、短期集中型の作成ワークショップに参加するなどして、メンター(作成支援者)に伴走してもらいながら作成することをおすすめします。詳しくは「つくる」にあるAPに関する説明を参照してください。
また、簡易にTPチャートのように振り返るためのSAPチャート(構造化アカデミック・ポートフォリオ・チャート)もあります。
活用
作成したAPは、基本的にはTPと同様の活用方法が考えられます。特に、大学教員としての活動を俯瞰することは、自分のキャリアの今後を考えたい場合や、就職や昇進の面接時に伝えたいことをまとめるときに役に立ちます。
更新
改善のためには、最短では1年毎に短期目標を中心に見直すと良いでしょう。
また、新規事業・プロジェクトの開始など環境が変わる前後も更新のタイミングです。
さらには、昇進の前後や異動の前後も自分の現在や今後の進む道を自ら定める意味においても、更新すると良い時機といえます。
更新は自分ではなかなかできないものです。更新ワークショップを利用するとよいでしょう。
参考文献
・大学評価・学位授与機構(監訳), 栗田佳代子(訳),ピーター・セルディン,エリザベス・ミラー(著)
(2009)『アカデミック・ポートフォリオ』玉川大学出版部 (Peter Seldin and J. Ellizabeth Miller (2008) The Academic Portfolio: A Practical Guide to Documenting Teaching, Research, and Service, Jossey-Bass Higher and Adult Education)
・栗田佳代子 (2010)「アカデミック・ポートフォリオ」(大学評価・学位授与機構(編著)『大学評価文化の定着』ぎょうせい) pp.78-84
・Yoshida, L., & Kurita, K. (2016) Evaluation of Structured Academic Portfolio Chart and Workshop for Reflection on Academic Work, Procedia Computer Science, 96, 1454-1462 (DOI: