導入する

ティーチング・ポートフォリオは教育改善あるいは教育業績の評価等に有効な手法です。しかし,導入の方法を誤るとその効果を発揮することができません。それどころか、教員にとってあらたな「負担」にすらなりかねません。以下に、「導入がうまくゆくコツ」を紹介します

導入の第一歩

TP、TPチャート、TSは導入のしやすさが異なります。

まず、何のために導入をするのかを明確にしましょう。大きくわけて、教育の改善のためなのか、教育業績評価に用いるのか、あるいは、いずれも目指すのか、という点です。

次に、作成をしてもらう対象や、導入およびその先のロードマップ、公開の範囲などを確認します。
例えば、全教員に教育改善を目的として導入したいということであれば、多人数に対して実施可能な、TPチャートの導入が適しています。

TPはより深い振り返りが可能で、正当な教育業績の評価資料としての通用性がありますが、作成負荷が高いため、いきなりTPを導入するよりは、TPの価値を実感してもらうことを目的に、まずは、TPチャートを作成する機会を設定することをおすすめします。

TPやTS作成の導入は、組織としての決定とリーダーシップをとる人の存在の2つが必要です(Kurita, 2013)。

導入についてのご相談を受け付けています。お問い合わせフォームをご利用ください。
また、実際にどのように準備・運営をするかについては、TPに関しては大阪府立大学高専ティーチングポートフォリオ研究会(2011)、TPチャートに関しては栗田他(2021)をご参照ください。

ワークショップスタンダード

TP作成による「教育活動の可視化」は,業績の公正な評価につながるばかりではなく,教育改善にも有効です。こうした効果を有するためには,TPが高い質 を保っていることが必要ですが,TPの質保証はその作成の場であるワークショップの質によってなされると私たちは考えています。では,ワークショップの質を高く保つにはどうすればよいのでしょうか。この問いに対する一つの取り組みとして,ワークショップの質についての基準を提案することにしました。本基準は,2012年10月23日に原案が作成され,2013年3月10日にティーチング・ポートフォリオ・ネットワーク第一回会議における議論を経て,Ver1.1としてここに公開されました。策定メンバーなどの詳細は末尾の更新履歴をご覧ください。

参考文献

・Kurita, K. (2013)
Structured strategy for implementation of the teaching portfolio concept in Japan, International Journal for Academic

・大阪府立大学高専ティーチング・ポートフォリオ研究会(編)(2011)
『実践 ティーチング・ポートフォリオ スターターブック』NTS出版

・栗田佳代子・吉田塁(2021)
「リフレクションを可視化するティーチング・ポートフォリオ・チャート作成講座」医学書院

導入例

既にTPやTSを導入し、導入や運用についての参考資料が公開されている機関の一覧です。掲載機関は随時募集しておりますので、ぜひご連絡ください。

大阪公立大学高専
(http://www2-tp.ct.osakafu-u.ac.jp/)
佐賀大学
(https://www.oge.saga-u.ac.jp/portfolios.html)
北海道科学大学
(https://www.hus.ac.jp/news/detail/8a2f9858ce66010d7fff7abf03019cd1bea0f561-16369/)
東京都立大学
(https://www.tcu.ac.jp/guidance/efforts/effort_5/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%B8%82%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%80%80%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%82%AA%EF%BC%88tp/)

導入のコツ・ポイント

ティーチング・ポートフォリオは教育改善あるいは教育業績の評価等に有効な手法です。しかし,導入の方法を誤るとその効果を発揮することができません。それどころか、教員にとってあらたな「負担」にすらなりかねません。以下に、「導入がうまくゆくコツ」を紹介します(「大学教育を変える教育業績記録」(セルディン、2007) p.24 p.29を参考に作成)。

・ポートフォリオの考え方やプロセスが全教員と大学執行部に完全かつ明確な形式で提示されること

・ポートフォリオ作成プログラムについて教員が「自分たちのものである」と感じられること

・ポートフォリオ作成プログラムの主目的がまず教育改善であること

・ポートフォリオが昇格決定に用いられる場合にはその評価基準が明らかにされること

・個人差を許容すること

・強制されるべきではなく教員の自発性を重んじること

・大学教務担当上層部の積極的なサポートと支持を得ること

・受け入れと実行に十分な時間–1年あるいは2年–をかけること

・小さく始めること

・最初から学内で最も尊敬される教員を活動に取り込むこと