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TP/TPチャートQ&A 3 その人の教育活動が一貫していたとしても、現場に即していなかったら?

【はじめに】

この質問は、facebook グループ「ティーチング・ポートフォリオ(TP)」(https://www.facebook.com/groups/TP2007/)において2018年1月30日になされたものです。ここでは、投稿者とコメントをされた方(末尾にお名前を掲載しております)およびTP・TPチャート普及支援をすすめている栗田・吉田の意見をまとめました。詳細なやりとりは、投稿を御覧ください。

【質問の概要】

TP/TPチャートの使い方によっては、自身の教育活動に対する「正当化」のツールになってしまうのでは、という懸念があります。「自分に都合のよい」エビデンスだけを集積し、自身の教育活動の正当化に使えてしまうのではないでしょうか。もし、そのような使い方ができてしまうとその教員の悪い面を助長する結果にはならないのでしょうか?例えば、その人の実践内容が教育現場の生徒の実態と一致していない場合、その人の中で理念・責任・方針・実践に一貫性があったとしても、教育活動として悪い方向に出てしまうのではないでしょうか? もし、以上の考えが正しいとして、高等学校で(TP/)TPチャートの研修を行う場合、教員の教育実践の質を向上させるために、どのようなことに留意する必要があるでしょうか。

【回答】

下記項目としてまとめています。

 ◆その「理念」は、「理念」でしょうか、という問いかけをしてみる

その「理念」とされているものがまだ「方針」や「方法」のようなら、もっと深い理念「生徒にこう成長して欲しい」という部分に気づいてもらうための、深め方が重要かもしれません。たとえばその人が「わかりやすい授業」を「理念」として掲げているような場合は、それはまだその背後にある理由がありそうです。それは何か、という点について考えてもらう、というような対応が考えられます。そのためには、ただ作成だけではなく、その見直しや他者とのシェア、そして、一回作って終わりというのではなく、継続的な見直しがなされていくと良いでしょう。

◆「成果・評価」へ注目する

TPチャート作成では、成果や評価について深くとりあげることができていませんが(理念を見出すことをまず最優先にしているため)、理念-方針-方法が一貫性しており、それが結実しているかどうかは、「成果・評価」によって示されます。目の前にいる生徒さんの確かな学びや成長は「成果・評価」およびそのエビデンスによって裏づけられます。 もしも、都合のよい成果・評価があげられ「一貫しているようにみえるが、生徒のためにはなっていない」場合には、先述の「理念」が浅いのではないか、方針や方法として十分なのか、という点に立ち戻る必要があります。

◆所属機関の理念との整合性を考える

この点は、所属機関に強く「ひっぱられない」ないよう注意が必要ですが、学校の理念を確認しておくことは必要かもしれません。ただ「学校理念」は一般的に抽象度が高いことから、「その理念を少し自分らしさが活かされた形でひきつけてみると、このような理念として表現できる」という形でとりこめるのではないかと思います。 TPはもともと大学教員を対象にした文書であり、「あまりに自分の教育理念が所属と異なるようであれば、所属大学を変えたほうが良いでしょう」という助言になることがあります。大学では採用時に研究業績を優先してきた経緯があり、教育理念のマッチングがなされていないことが高等教育の問題の1つにあるように思うためです。高校ではそのように簡単にはいかないかも知れませんが、「違う」ことがわかることが、次への第一歩になります。

◆対話の出発点ととらえる

TPやTPチャートを作成し、自分の理念を明らかにすることがまず、よりよい教育への出発点になります。たとえば先生の教育理念が現場にそぐわず「問題である」として、まずは、その問題の所在が明らかになります。その先生の行動を理念レベルで理解できてはじめて、ではどうすればよいのか、という次の段階に進むことができます。 また、TPやTPチャート作成や対話を通して、表現は多様にせよ「生徒の成長を願う」部分が共有できれば、現在の方針・方法の問題点などの改善の糸口が見つかるかもしれません。 また、「受け入れられる」状態にあり、自分で納得をして「変わろう」と思えたときに初めて変わっていけるのではないでしょうか。人はなかなか変わりません。周りから「指導」によって変わることを強いられても、変わることは難しいでしょう。TPやTPチャートの作成により安心して自分と向き合える環境をつくり、変わるための場を継続していくことが、遠回りのようで近道なのかも知れません。 さらに、機関という単位でみたとき、その先生の「理念」が一見現場とかけ離れたものであったとしても、そうした理念の多様性が生徒の学びを総合的に支えている可能性もあります。たとえば「わかりやすい授業」の背後にある理念が、生徒の学ぶ意欲を高めたり学校の授業にはおさまらない活動に向かわせている可能性もあります。「教育とは何か」という根本的な問題に立ち返ることになりますが、そうした理念の多様性を互いに理解し、組織としてどう生徒の学びを考えるのか、という検討のスタートになるのではないでしょうか。

 【質問した人・回答した人】

質問者:公立高等学校教員  小瀧さん 回答者:京都大学職員    松村さん 私立中高一貫校教員 中澤さん 東京大学 栗田・吉田