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ファシリテーションのこと(4)

海外出張中のためやや間があいてしまいました。

はじめに

自分のファシリテーションについてTPチャートを援用して振り返った記録です。前回までは、理念について振り返りました。今回は方針・方法について振り返ります。TPチャートでは理念、方針、方法と3段階で振り返りますが、これをTPとして文章にする場合、理念・方針、あるいは方針・方法という形で、方針を理念か方法のいずれかと一緒に説明することが多いです。いずれにするかは当人の説明のしやすさに依存します。ここでは、方針・方法という形でまとめようと思います。

理念のまとめ

ファシリテーションについて考えたとき、自分の理念は、参加者に関するもの、場に関するもの、そして、自分のあり方に関するものから構成されています。
  • 参加者:誰もが変わりうる・本人自身の気付きがもっとも本人自身を変化させうる
  • 場:その時間を費やすに値するのが良い場(TPチャートをつくることに意義を見出し、没頭できる)
  • 自分のあり方:なんでも知ってる黒衣
これらをまとめていくうち、さらに理念として書いておいたほうがよいものとして、「参加者に対する敬意」があります。参加者の方々が日頃働く現場を持ち、そこでそれぞれの専門性を発揮して教育に携わっていらっしゃること自体に対する尊敬の念です。「黒衣」という表現にも含まれている気持ちでもありますが、そうした先生方がご自身の意思で教育をよくすることをお手伝いする、というのが、自分のファシリテーションにおける基本姿勢のように思われます。

方針・方法

私のファシリテーションにおける方針および方法は、上記の理念、つまり「本人が自身で気づきを得られるような良い場をつくるため黒衣に徹する」ための方針・方法ということになります。方針を説明し、それにひもづく形で方法もあわせて記述していきます。  

参加者が貴重な時間を使いこの場にきてくれていることへの感謝の気持ちを表現する

これは上記に書いた参加者に対する敬意にひもづく方針の一つです。自分も教育に携わる者でもあるので、同僚性も持ちつつ、いろんな時間の使い方があるなかでこの場にいらしてくれたことに対し、感謝の念を持っています。そして、主に研修の冒頭に御礼とともに、特にTPチャートの場合はご本人のために時間を使って欲しいことを伝えます。 具体的な方法
  • 御礼を冒頭に伝える
  • 普段の多忙を労い、ご自身のために時間を使って欲しいと伝える
  • 全般として丁寧な言葉づかいをする

TPチャートを作成し共有するこの場の目的や価値を知ってもらう

TPチャートの作成は、当人が自分のことを振り返って付箋に書き留めていくことで進んでいきますので、主体性が求められます。それを「やらされ感」ではなく自身の意思で関わっていくためには、その行動自体の目的・目標を示すことが重要であると考えています。何のためにこの貴重な時間を使ってここにいるのか、そこをまずご理解いただくことは重要だと思っています。 研修への参加は必ずしも自発的な参加ではない場合も多く、その場合は特に意義を丁寧に説明します。また、「講師から新しい知識が得られる」という期待がある場合も多いため、そうではなくていわば「自分で自分を見出す時間である」ことを明示しています。 TPチャートの作成プロセスにおいては「他人と共有」という活動が自己省察を深める上で重要です。他人と協同するタイプの研修は、その活動の価値が明確でないと、また、そういう協同が障壁なく実現できないとその効果が期待できません。したがって、なぜペアワークがあるのか、どういう関係性でペアワークに取り組んでもらいたいのかは丁寧に説明するよう心がけています。 具体的な方法
  • 作成の意義、他者と共有することの意義など、この場における研修自体の意義や目的・目標を伝える
  • 自身が振り返るための時間であることを伝える
  • 知らない人とシェアをする目的と意義を伝える
  • 3K(経緯をもって忌憚なく建設的に)などフラットな関係づくりをする
 

リラックスした雰囲気をつくるため、自分が緊張感を与えない

TPの研修は基本的に参加者が自分に向き合う研修とのあるため、周囲に遠慮があったりファシリテーターの存在が強くては、集中ができないと考えています。ファシリテーターとして安心感を与えつつも、存在感が「あんまり出過ぎない」ようにしています。 たとえば服装ですが、失礼にならない程度には動きやすいものを選びます。かっちりとしたタイトなスーツよりは、少し手足が伸ばせる上下にすることが多いです。 また、以前に比べて改善したと自分でも感じるのは、体がのびのびと伸ばせるようになったことです。説明をしているときのボディランゲージを大きくすることで、自分の緊張もほぐれます。体が縮こまり、動きや表情が小さいと緊張感が表現されてしまうため、特に冒頭スライドを指し示すときなどは腕をいっぱいに伸ばすことをこころがけています。 また、話し方としては、もともと速く喋れませんけれども、ゆっくりと明確にする一方、語尾はやさしく静かにしめることが多いです。特に各段階で参加者にふせんを記入する作業に移行してもらう最後は、参加者に預けるつもりで話すようにしています。 具体的な方法
  • 動きやすい服装をする
  • 身体をのびのび大きく使って腕をいっぱいに伸ばして指したり、説明する
  • 語尾は静かにやさしくしめる

一人ひとりに語りかけたい

この方針は上記リラックスした雰囲気の下位方針の一つということもできます。多人数の参加者対ファシリテーターというよりは、一人に一人のファシリテーターが多数組、という環境のつもりで「在り」ます。 何か演説というよりは、一人ひとりに話すつもりで話すので、視線を個人にあわせたり、間をとるようにしています。「私達」という言葉は、教師としての同僚性からきていますが、1対1の関係性に寄与するのではないかと思っています。 そして、ここでの話し方は、TP作成ワークショップでのメンティー(作成者)とメンター(作成支援者)の対話の時間であるメンタリングにおける、メンターのあり方を目指しているところがあります。TPチャートのファシリテーションの多くは、行っていただきたいことの指示が大半ですが、「在り方」としては対話をしているような関係性を参加者の方々と築きたいと思っています。これは次の「自分のリフレクションに集中してもらいたい」とも関連することでもあります。 具体的な方法
  • 気持ち、間をとって話す
  • 一人に話しかけるように話す
  • こちらをみてくれている人に、視線をあわせたりする
  • 「私達」という表現を使う

自分のリフレクションに集中してもらいたい

TPチャート作成の場は、参加者自身が振り返るためにあるので、この「リフレクションへの集中」はもっとも重要なことです。「黒衣に徹する」ために行っているのは、本人がやるべきことに迷いなく向かえる環境づくりです。ファシリテーターの言動に対して感情が動く、たとえば、指示が曖昧で不安になったり、いらつかせたり、飽きたり、うるさいと思ったり、ということがないように、です。 見回るときも、あんまりじっと見られると集中をそがれると思うので、TPチャートの場合、ふせんが極端に少ない人がいないかどうか、手が止まって困っている人がいないかどうかさえ確認できればよいので、なるべく滞留しないように静かに全体を回ります。 また、テクニカルには、時間管理が重要であり、エクセルで分単位でのスケジュール変更を行っています。もともと設定された時間に対して、研修によってある活動が長引いたり、早めに切り上げられたりするとき、時間配分を細かく変えてその場に応じた流れにしています。 具体的な方法
  • 行っていただきたいことの指示は、明確に短文で伝える
  • じゃまにならないようにそっと見回る
  • ワークの指示はだんだん手放す
  • 時間をエクセルで細かく管理し、柔軟に変更をかける

参加者が今感じていることを把握し、それを優先したい

この方針はリフレクションに集中してもらうための下位方針といってもよいかもしれません。TPチャートはスライドも整備され、かなりデザインをしっかりしていますが、それでも目の前にいる参加者は毎回異なります。参加者の反応を敏感に感じ取り、臨機応変に対応することは、「良い場」をつくる上ではデザインの周到さとともに大変重要です。 具体的な方法
  • 参加者が特に不安に感じられそうなところは、丁寧に説明する
  • 付箋を書いているとき半分以上の人の手が動いていたら、延長する
  • 参加者の反応をみて、適宜説明を追加する
 

おわりに

上記は変更されたTPチャートです。この「黒衣」についてはもう少し方針として自分の在り方などいろいろと更新がありそうですが、ひとまずのところをまとめました。 ファシリテーションをまとめていて感じたのは、昔は研修は「1対多」でしたが、上記でも書いたとおり「1対1 ✕多数組」という意識が持てるようになってきました。これはTPチャートの研修だけでなく、授業やその他のトピックの研修でも同様です。ただし、これが克服できていないのは、カメラに向かうときです。表情や動きが固くなるのは緊張のためですが、今回の振り返りをしたことで、カメラで動画撮影する場合にもひょっとしたら、自然に振る舞う事ができるかもしれません。