つくる
TPの作成
ティーチング・ポートフォリオはA4版で約8ページから10ページ程度の本文と、本文の記述を裏付けるための資料から構成されます。
TPを作成するために必要な条件は特にありません。年齢や職位、経験を問わずいつでも作成できます。TPを作成する目的と読み手を定め、TP作成に必要な時間を確保することが作成の第一歩となります。
ティーチング・ポートフォリオの作成は独力でももちろん可能ではありますが、一人で自分と向き合い続けるのはなかなか簡単なことではありません。メンターの伴走を得られる短期集中型のワークショップに参加して作成することをお勧めします。
TPのワークショップは、典型的には2日半のスケジュールとなります。
作成者(メンティー)には、作成をサポートするメンターが一人期間中ずっと伴走します。
ワークショップ前から終了後までの流れは、次の通りです。
まず、ワークショップ開始前に、スタートアップシートと呼ばれる事前課題にあらかじめ取り組み、ワークショップの最初にTPチャートを作成して、そこから、メンターと対話をしながら自分に向き合い、自分の活動について振り返り、TPの執筆を進めていきます。
最終日には、完成したTPを披露する機会があり、相互のTPについて知ることができます。これもまた、視野を広げる機会として役立ちます。
TPの作成により、自分の教育活動を見渡し、再発見し、将来の道筋を明らかにすることができます。また、参加者相互に良質なネットワークを築き、教育活動への意欲をあらたにすることができます。
- 事前準備
- ワークショップ参加前にスタートアップシートに取り組みます。
- 1日目
- オリエンテーションの後、TPチャートの作成に取り組みます。そして、メンターと1対1のメンタリングを受け、自身の活動を振り返って理念を見出します。午後はメンタリングを踏まえてTPの執筆をします。夜に設定された締切時間までに第1稿をメンターに提出します。目次がたてられ理念について整理できつつあるのが目安です。
- 2日目
- 午前中にメンターと1対1のメンタリングを受け、理念と方針・方法の結びつき中心に深め、午後はメンタリングを踏まえてTPの執筆をします。夜に設定された締切時間までに第2稿をメンターに提出します。草稿はだいたいここで仕上がるのが目安です。
- 3日目
- 午前中にメンターと1対1のメンタリングを受け、エビデンスの添付や構成などについて修正をします。昼食後「To be a good mentor」というミニセッションでメンターとして必要な資質・能力について考えます。また、互いのTPを披露して学び合う「発表会」を経て、修了となります。修了証が授与されます。
- 第3稿の提出
- ワークショップは終わりましたが、最後のメンタリングを踏まえたTPの第3版を1週間から10日後にメンターに提出します。これをもって今回のワークショップのカリキュラムの完遂となります。
TPチャートの作成
TPチャートのワークショップは、典型的には2時間半のスケジュールとなります。作成した後に、さらにブラッシュアップをする場合にはプラス1時間を追加します。
TPチャートのワークショップでは、随所にペアで共有をする機会があります。他者に自分のTPチャートの内容を伝えることで、自分の考えが整理されたり、また、他者からのフィードバックや他者のTPチャートから多くの気づきを得ることができます。したがって、一人で作成するよりも楽に楽しく、TPチャートに取り組むことができます。
TPチャートは、紙版とデジタル版の二種類あります。どちらを用いるかは、好みによりますが、紙版のよいところは、直に文字を書き手を動かすことが思考と同期する点です。一方のデジタル版は、保存や更新の点で優れています。
- 作成目的などの書き出し
- 自分の専門領域と作成目的について記述し、本日の参加目的を確認します。
- 教育活動の振り返り
- 担当授業や課外活動など、教育活動として行っていることを書き出します。続いて自ら改善したこと、努力していることを挙げ、そして、教育活動の成果および評価を挙げます。一つの事項を1枚の付箋に書いていきます。
- ペアで共有
- 自分の活動をペアで相手に説明し、自分の活動を相手にしっかりと聞いてもらうことで、自分でも活動全体を把握します。
- 方法・方針・理念を書き出す
- 教育活動に共通していたり重要と思って行っている方法を挙げます。続けてなぜそれを行っているのか、その理由を方針として書き出し、さらにその方針をなぜとっているのか、を「理念」として書き出していきます。
- ペアで共有
- 方法・方針・理念をペアで相手に説明します。理念から方針・方法を結びつける形で説明をすることで、自分の活動の軸に気づきます。
- エビデンスの確認
- TPチャートは教育業績評価の資料にはなりませんが、TPの重要要素であるエビデンスについての理解を深めるために、各事項にエビデンスをつけられるかどうか確認をします。
- エビデンスについての共有
- 自分の教育の良さについてエビデンスを求めるとしたら、どうすればよいかという点について検討します。
- 目標と感想を書き出す
- 理念と現実のギャップへの気づきから短期目標と長期目標を書き出します。また、あわせてTPチャートを作成した感想を、当初に書いた作成目的に照らしながら書きます。
- ペアで共有
- 目標と感想を共有します。
TSの作成
TSのワークショップは、TPチャートの作成を前提として1日です。
まず、TPチャートの見直しを行いつつ、ペア同士で相互のTPの内容を理解します。続いて、TSの特徴や構造についての講義の後、一つのTSの事例検討を通して「良いTS」について学びます。その後は、各自のTSの執筆を行い、草稿について相互にフィードバックを行い、再度執筆の時間をとって、終了となります。
- 事前準備
- ワークショップの参加前にTPチャートの作成をしておきます。
- TPチャートの見直し
- ワークショップでは、TPチャートの見直しから始めます。
- ペアで共有
- TPチャートの見直しのセッションでは2回のペアでの共有があります。この共有をすることで、自分と相手の教育活動についての理解を深めます。
- TSについてのミニレクチャ
- ティーチング・ステートメント(TS)について、短い講義を受けます。TSの作成目的や構造、特徴について学びます。
- TSについての添削演習
- 実例を用いてその改善したらよいと思うところを検討し、「良いTS」についてのポイントを学びます。
- TSの執筆
- TPチャートをふまえながら、TSを執筆します。
- ペアで共有
- できたところまでのTSをペアで共有し、互いにフィードバックをします。
- TSの執筆
- 相手からのフィードバックを踏まえてさらに執筆を続けます。
- 違うペアまたはグループで共有
- 暫定的にできあがったTSをもとのペアとは違う組み合わせのペアまたはグループで共有します。
APの作成
APの作成には、TPを作成した人が他の活動についても振り返りたいということで作成する場合と、直接APを作成する場合の二通りがあります。
TPを作成してからAPを作成する場合は、TPを少しコンパクトにしたものと、事前課題であるAPのためのスタートアップシートに取り組んで、APの作成ワークショップに臨みます。
直接APを作成する場合には、SAPチャートと呼ばれる活動全体を俯瞰するためのワークシートと、スタートアップシートを事前課題として、作成ワークショップに臨みます。
いずれの場合もワークショップの工程はTP作成ワークショップと同じで、メンターの支援のもとでメンティーは、作成を進めていきます。
メンター・スタンダード
メンターになるには、ティーチング・ポートフォリオを作成していることが一つの条件となりますが、それは十分条件ではありません。
ワークショップのなかには、大抵「To Be a Good Mentor」というプログラムが用意され、メンターの資質について考えてもらう機会があります。ここでは、このプログラムによってメンティーの皆さんからだされたメンターとしての望ましいあり方について、まとめたものを「メンターチェックリスト」として公開します。